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SASS(Switching Angle Sample Spinning)法による 化学シフト異方性(Chemical Shift Anisotropy: CSA)の測定 [ Japanese | English ] |
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[背景と目的] 固体NMRの標準的な手法であるマジック角試料回転(Magic Angle Spinning: MAS)を用いると、固体NMRの共鳴線の幅を拡げる原因の一つである化学シフト異方性が消失し、高分解能測定が可能になります。このときの共鳴線のピーク周波数は化学シフト等方値を示しています。 固体高分子において、その二次構造に関する情報を化学シフト等方値を測定することにより取得する試みがなされてきました。 ただし、MASにより化学シフト等方値を簡便に測定することはできるのですが、その代償として化学シフト異方性に関する情報を失うことになってしまいます。化学シフト異方性には分子構造に関わる豊富な「情報」が含まれているはずなのに〜! そこで、MASによる化学シフト等方値の高分解能測定と、化学シフト異方性の測定を両立させる賢い測定手法が開発されてきました。その例として (1) ローター回転同期180度パルス[1] (2) Magic Angle Turning[2] (3) SASS[3-4] が挙げられます。 我々はここで、(3)のSASS法を利用した化学シフト異方性の測定により高分子の二次構造の取得し、分子構造と物性に関する知見を得ることを目指しています。というのも、他の手法に比べてSASS法には (a) ラジオ波パルスの非理想性の影響を受けない (b) スケーリングファクターが比較的大きい (c) t1次元のスペクトル幅の制約が無い といった利点があるため、質の高い化学シフト異方性の測定が可能になるはずなのです!! [方策] 図1に炭素13核の化学シフト異方性を測定するためのSASSパルスシーケンスを示します。 SASS法のポイントは、試料回転軸をマジック角からずらした状態でt1の間時間推進し、その後試料回転軸をマジック角にセットして磁化の観測を行うところにあります。 [SASSプローブの開発] 高速にスピニングモジュールの角度をスイッチするために、スピニングモジュールに滑車を取り付け、ステッピングモーターの回転をスピニングモジュールに伝える機構を備えたプローブを開発しました。 なお電気的には、スピニングモジュール内のコイルは、400MHzと100MHzの二周波数において共振を合わせることができ、9.4Tワイドボア超伝導磁石中で、プロトンと炭素13の二重共鳴実験ができるようになっています。 [SASSスペクトル] 図5に示したのは、ジメドンの粉末試料でSASS法を適用して得た炭素13のスペクトルです。化学的に異なる環境にあるそれぞれの炭素13核から、個別に化学シフト異方性を測定できています! 次の例はPBLA(poly-beta-benzyl-L-Aspartate、図6参照)の化学シフト異方性についてです。PBLAは加熱によって不可逆的な転移を起こすことで知られています。ここでは、化学シフトの等方性を測定して、PBLAの二次構造の転移の過程を追っています。二次構造に関してより多くの情報を得るために、SASSの手法を用いて化学シフト異方性を調べることにしました! 図7(a)に示したのは、PBLAの炭素13の等方性スペクトルです。円内に示されているように、2種類のカルボニル炭素はかろうじて区別可能です。このように周波数が近いピークの化学シフト異方性の値が得られました!、2次元SASSスペクトル(図7(b))とその1次元スライススペクトル(図7(c))を示しています。熱処理したPBLAでの実験は現在進行中です。 SASSは磁化交換の実験にも使えて、別の観点からの立体構造の情報が得られます。マジック角から外すと、線形が広がるせいでスペクトルが重なり、当該スピン間にflip-flop遷移が起こります。flip-flopの遷移確率は双極子相互作用の強度やスピン間の距離の依存するので、ある時間間隔で磁化を交換させていくことによってその距離が分かります。図8に示したのは、SASSの磁化交換のパルスシークエンスとそれによって得られた2Dスペクトルです。 [文献] [1] R. Tycko, G. Dabbagh, P.A. Mirau, J. Magn. Reson. 85 (1989), 265-274. [2] J.Z. Hu, R.A. Wind, J. Magn. Reson. 163 (2003) 149-162. [3] T. Mizuno, K. Takegoshi, T. Terao, J. Magn. Reson. 171 (2004) 15-19. [4] T. Terao, H. Miura, A. Saika, J. Chem. Phys. 85 (1986) 3816-3826. [このプロジェクトで活躍中!]
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