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マイクロコイルマジック角試料回転 (マイクロコイルMAS) [ Japanese | English ] |
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[背景] --- マイクロコイルって? --- NMRの世界で「マイクロコイル」といえば、体積がマイクロリットルのオーダーの微小なコイルのことを指します。大体、直径が1mm以下のコイルですね。直径数ミリ〜十数ミリメートルの通常のNMRコイルに比べると相当小さく感じますが、慣れれば手巻きで作成できるし、NMR信号も検出することができます。微量試料に対して感度良くNMR測定ができるということで、溶液NMRのマイクロコイル測定がいろいろと行われてきました。さらにマイクロコイルを用いると、非常に強力なラジオ波の照射が出来る、という意味で、マイクロコイルを固体NMRへ適用した報告もあります。 --- マイクロコイルでマジック角試料回転!? --- 我々は、固体NMRのスタンダードなアプローチであるマジック角試料回転(MAS)とマイクロコイルを融合させることを目指して、新しいハードウェアを開発することにしました。そして、既存のMASハードウェアを改造して、ローター(試料管)にキャピラリー(極細ガラス管)を突き立てて、キャピラリーをローターもろともスピニングさせ、キャピラリー部分のみマイクロコイル内に挿入する、というアイデアに至りました(図1)。 注1:他の複数のグループも同様のアイデアで優れた研究成果を残しています。詳しくは下記の文献[1][2]を参照してください。 注2:最近、全く異なるアプローチでマイクロコイルMASを実現した研究報告も出ました。マイクロコイルをローター内に仕込んで、コイルそのものもスピニングさせる(Magic Angle Coil Spinning: MACS)という素晴らしいアイデアです。文献[3]を参照してください。 [コイン型マイクロコイルMASプローブ] [4-5] --- プローブそのものも小型に! --- 図1あるいは図2(a)に示したマイクロコイルMASのアイデアを形にするにあたって、コイルだけではなく、プローブそのものも超小型にしようと決めました。その意図は、マイクロコイルプローブを既存のMASモジュールに装着可能なものにすることにあります。既存ハードウェアに対する改造を最小限に留めつつ、マイクロコイルMASを実現できるメリットがあるからです。図2(b)に示すように、プローブは500円玉サイズ(あるいは2ユーロ硬貨サイズ)の基板に収まりました。基板の中心に開けた穴の内部に直径0.8mmのマイクロコイルが置かれており、図2(c)のスピニングモジュール(Varian製、4mm)に装着すると、ローターに突き立てた直径0.5mmのキャピラリー部分がちょうどマイクロコイル内に挿入される構造になっています(図2(d))。 このハードウェアで、スピニング周波数15kHzのマイクロコイルMASを実現することができました。また同サイズで470MHzと100MHzに対応した、2重共鳴用のコイン型マイクロコイルプローブも開発することに成功しています。 [MQMASへの応用] [4] --- 強力なラジオ波照射を活用する --- マイクロコイルを用いると、今までは到底不可能だった程強力なラジオ波を照射することができるようになります。これは、マイクロコイルMASが固体NMR分析に新展開をもたらし得ることを意味しています。我々は、無機固体材料の分析を一つのターゲットとしています。無機物を構成する様々な元素の原子核の多くは1/2より大きなスピン量子数を持ち(図3)、それ故にスピンダイナミクスそしてNMR信号は四極子相互作用の影響を受けます。四極子相互作用は分子構造や物性を反映する重要なパラメータである一方で、NMR信号(共鳴線)の広幅化の原因ともなっており、かつてはかなり特殊なハードウェアを用いない限り、高分解能測定が困難でした。 ところが1995年のMQMAS法の出現により、状況は一変しました。 --- 無機物質の固体NMRがアツイ! --- 1995年のMQMAS (Multiple-Quantum Magic-Angle-Spinning)法[6]の提唱以来、通常のMASのハードウェアを使って四極子核(スピン>1/2の原子核)の固体高分解能NMR測定を行うことが可能になり、四極子核を含む様々な無機固体材料の分析を行う試みが盛んに行われるようになりました。四極子核は周期表の約7割を占めており(図3の赤色で示した元素に注目!)、その高分解能NMR測定によりこれまで無理だった分析が可能になったインパクトは非常に大きいのです! --- 多量子遷移の効率が問題だ! --- ただし、MQMAS法には感度が低いという難点があります。これには、
--- マイクロコイルMQMAS --- 上記で紹介したマイクロコイルMASプローブを使って、Na2(SO)3粉末試料中の23Na核の多量子コヒーレンスの生成効率と単量子コヒーレンスの変換効率を、様々な照射ラジオ波強度に対して実験的に調べました。また、ラジオ波の強度が四極子相互作用に比べて大きいときに有効な遷移効率の近似理論式を構築し、実験結果を定性的に説明することに成功しました。また、数値シミュレーションを駆使して、コイル内のラジオ波強度の不均一性の影響も考察し、与えられた四極子パラメータに対して、MQMASの感度を最適にするラジオ波強度とパルス幅の組み合わせ求めることができるようになりました。詳細は文献[4]を参照してください。 [文献] [1] H. Janssen, A. Brinkmann, E.R.H. van Eck, J.M. van Bentum, A.P.M. Kentgens, Microcoil high-resolution magic angle spinning spectroscopy, J. Am. Chem. Soc. 128 (2006) 8722-8723. [2] K. Yamauchi, T. Asakura, Development of microMAS NMR probehead for mass-limited solid-state samples, Chem. Lett. 35 (2006) 426-427. [3] D. Sakellariou, G. le Goff, J.-F. Jacquinot, High-resolution, high-sensitivity NMR of nanolitre anisotropic samples by coil spinning, Nature 447 (2007) 694-698. [4] M. Inukai, K. Takeda, Studies on multiple-quantum magic-angle-spinning NMR of half-integer quadrupolar nuclei under strong rf pulses with a microcoil, Concepts in Magnetic Resonance 33B (2008) 115-123. [5] K. Takeda, Coin-Sized Probes for Solid-State NMR, 46th ENC, 10-15 April 2005, Providence, RI, USA (poster presentation). [6] A. Medek, J.S. Harwood, L. Frydman, Multiple-quantum magic-angle spinning NMR: a new method for the study of quadrupolar nuclei in solids, J. Am. Chem. Soc. 117 (1995) 12779-12787. [このプロジェクトで活躍中!]
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