双極子というとピンとこないかもしれませんが、
要するに、“棒磁石”のことです。
N極とS極、2つの極があるから双極子、というわけです。
つまり、双極子−双極子相互作用とは
“棒磁石と棒磁石の関係”のこと。
机の上に2本の棒磁石がおいてあったとします。
片方の棒磁石に軽く手をふれて揺らしてみましょう。
もう片方もそれにつられて揺れるはずです。
この揺れ方は、2本が近づきあっているほど大きい。
つまり、2本の棒磁石の関係(相互作用)の強さは、距離と
相関関係があるのです。
(実際には距離の3乗に反比例します。)
NMRで双極子−双極子相互作用が見える?
・溶液NMR → ×溶液状態においては、激しい回転運動により各原子間の相対配置が、
NMRで観測可能な時間尺度よりも速く変化しています。そのため溶液NMRでは、双極子−双極子相互作用は平均化されてしまい、
スペクトルに(ほとんど)影響を及ぼしません。
・固体NMR → ○
固体状態においては、各原子の配置が空間的に固定されています。
固体NMRでは、この双極子−双極子相互作用の強さをダイレクトに
観測することができます。
溶液NMRでは失われてしまった情報を、固体NMRで得ることができるのです。
双極子−双極子相互作用に関する模式的な固体NMRスペクトル1.単結晶または一軸配向試料
Δω:双極子−双極子相互作用の強さと、
結合軸と外部磁場とのなす角の関数。
2.粉末試料または無配向試料 (いわゆる粉末パターン)