荷電粒子である原子核が自転運動するとどうなる?
電流が流れたとみなせるので磁場が発生し、磁気モーメントができます。
一般的に核スピンは上図のように矢印で表わします。この原子一つ一つの「磁石」を「スピン」と呼んでいます。
普通の磁石を考えてみよう。地球の大きな磁場の中に置かれた磁石のN極は北を指す。これと同じことが核スピンにも起こっているのだ!!普通核スピンはランダムな方向を向いている。 でも磁場中に入れると・・・
磁場方向と反対方向にきれいに分かれる!!
これは核スピンの「磁石」には磁場に対して整列するものと反対を向くものの2種類の性格があるから。 この2種類のものは微妙にエネルギーが違うのだが、エネルギー(ラジオ波)を吸収・放出して状態を変えることができる。
NMRでは核スピンのエネルギーの吸収・放出を観測する!
まあ詳しくは NMRのFAQ(NMRとは?) を参照して
さて原子核が回転していると先程述べたが、厳密に言うと「量子論的に」回転しているのであって、原子核が内在的な角運動量を持っていると考える。このスピン角運動量を表わす量子数がスピン量子数であり、これにより原子核は量子化された角運動量・磁気モーメントを持つ。核スピンは一般的にIで表わされる。「スピン Iの核」というのは・・・
例えば「スピン 1/2 」とは対象にしている原子が I=1/2 のスピン量子数を持っているということ「n−スピン系」というのは・・・
例えば「2スピン系」といえば対象分子中に観測可能な対象原子が2つ含まれていること、これらは相互作用し合うためスピン系が大きくなるとスペクトルも複雑になってくる。
核磁気モーメントのエネルギーは量子化されおり、磁気量子数mIを用いて表わされる。 磁気量子数 mI は値
mI= −I,−I+1,−I+2,・・・,−1,0,1、・・・、I−1,I
を取る。つまり核スピンIを持つ核は磁場中で 2I+1 個の配向を取る。
質量数 原子番号 核スピンI 核種の例 奇数 奇数、偶数 半整数(1/2,2/3,2/5,…) 1H,15N,13C,17O,19F,31P,129Xe,… 偶数 偶数 0 12C,16O,32S,… 偶数 奇数 整数(1、2、3、…) 2D,14N,…
例えば炭素CをNMRで観測する場合を考えよう・・・。
- 12CはI=0のためNMRで観測ができない。
- 13CはI=1/2のためNMRで観測が可能である。
- 13Cの天然存在比は1.1%である。
- つまり一般的に炭素のスペクトルはほとんど見えない。(ただでさえ13Cの感度は1Hの4分の1である。)
- しかし逆に分子中のある炭素原子を13Cに置換してやることにより(「ラベルする」という)選択的にその炭素のスペクトルを見ることができる。
- しかも近くに同じ13Cにラベルされた原子が無ければ炭素同士の相互作用がほとんど無視できるため簡単なスペクトルが得られる。
- よって目的の局所構造だけを調べることが可能なのだ!!