超臨界流体を用いた金属微粒子の調整とその分光学的評価

 

ナノメートルサイズの金属微粒子は、触媒等への応用面もさることながら、少数多体からなる量子系としても大変興味深い特性をしめす。このような金属微粒子の粒径のコントロールは材料化学の重要なテーマであり、さまざまな手法が提案されている。なかでも、ポリマーを保護材とした化学還元法による白金、金、銀なのどのナノメートルオーダーの貴金属超微粒子の生成は、有望な方法として着目を集めている。このような化学還元法では、従来常圧下の還流条件で行われることが多く、反応時間が時オーダーのものがもっぱらである。われわれは、高温高圧の条件下で反応を進めることにより、温度圧力を制御することで、粒径サイズのコントロールならびに反応の効率化を測ることを企画している。

 図はH2OとEtOHを1体1の体積比率で混合した溶媒中200℃ 5 MPa で生成した白金の微粒子の電子顕微鏡写真である。反応時間は数秒程度であり、非常に効率のよい生成が行える。また、非常に粒径のそろった均一なものが得られている。保護材としてはPVPを用いてある。溶媒種、温度条件、圧力条件によって生成する微粒子の状況は大きく異なっていることが明らかになりつつある。また白金以外にも、ロジウムやパラジウムでも同様の手法で効率よく精製することが可能である。

 このような金属微粒子を光励起するとどのようなプロセスがおこるのであろうか?われわれはこれを熱検出の立場から追及している。図はこのように生成した白金微粒子を388nmで光励起したときに得られるTG信号である。微粒子は光励起されると価電子がそのエネルギーをうけとって励起されるが、この電子のエネルギーが微粒子内の格子振動エネルギーへと変化され、さらに溶媒へとエネルギーが流れていく。得られた信号もこの二段階のプロセスで解釈され、はじめの過程がおおむね10ps程度、次の過程が100ps程度で起こっていると解釈される。

このような過程が微粒子の状況によってどのように変わっていくかは、大変興味深い問題であり、現在検討を進めているところである。

 (この研究は奈良女子大学生活環境学部の原田先生との共同研究である)

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