蛋白質の構造変化に伴う拡散定数の変化
(Diffusion coefficient of the unfolded protein)
蛋白質の折りたたみや変性過程の研究において、蛋白質構造変化を知ることは非常に重要であり、これまでにも種々の物理量と変性構造との関係が調べられてきました。例えば、発色団の吸収スペクトルを調べることでその周りの構造がどのように壊れていくかを知ることができますし、またCDスペクトルより、ヘリックスやβシートの含量についての知見が得られます。こうした構造変化についての情報を与える物理量として、我々は拡散定数に着目しました。拡散定数は蛋白質のグローバルな構造変化やその大きさを反映するため、変性状態を探る有用な指標と成ると考えられますが、まだ変性と共に拡散定数がどうなるのかという基本的なことさえ明らかになっておりません。そこで、ここではまずミオグロビンというヘム蛋白について、種々の変性条件で拡散定数を測定しました。
Myoglobin(Mb):
Carboxymypglobin(MbCO)の光解離反応:
研究の目的:
蛋白質の構造変化に伴う拡散過程の変化の研究:時間分解過度回折格子(TG)法により、カルボキシミオグロビン(MbCO)の光解離反応を用いて調べた。Results and Discussion
変性剤(Gdn-HCl)濃度によるMbCOの変性曲線
MetMbのtransition point
: Gdn-HCl 1.1M
DeoxyMbのtransition point
: Gdn-HCl 1.3M
MbCOのtransition point
: Gdn-HCl 1.6M
変性剤(Gdn-HCl)濃度によるMbCOのTG及びTA信号の変化
TG信号のFitting equation :
変性剤(Gdn-HCl)濃度によるMbの拡散定数の変化
● Native stateでMbの拡散定数 :1.29 x 10-10 m2s-1
● Unfolding stateでMbの拡散定数 :0.32 x 10-10 m2s-1
● 拡散定数から求めたtransition point:Gdn-HCl 1.8M
● 蛋白質の構造変化に伴う蛋白質の拡散過程の変化を,時間分解過度回折格子(TG)法により、カルボキシミオグロビン(MbCO)の光解離反応を用いて調べた。
● TG信号の時間変化からnative及びunfoldedミオグロビンの拡散定数がそれぞれ1.29x10 -10m2s-1及び0.32x10 -10m2 s -1と求められた。 ストークス半径は変性により4倍程大きくなる。
● 拡散定数から見た変性曲線はCDモニターの場合に近いが構造の壊れ方は少しゆっくりに見える。