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キレート法と無機塩を利用した酸化チタンゲルの作製

 当研究グループでは、シリカのゾル−ゲル系において、「相分離を伴うゾル−ゲル法」を用いて新規機能性材料を作製してきました。この手法を非シリカ系のゾル−ゲル系に応用する際、用いる金属アルコキシドの高い反応性が問題となっていました。多くの金属アルコキシドは高い反応性を持つため、その加水分解、重縮合の過程を制御し、整ったマクロ構造を得ることは困難です。
 酸化チタン (TiO2) は、n型半導体性や光触媒機能を有しており、近年、幅広い分野で注目を集めている材料です。しかし、チタニウムアルコキシドも、上述の通り反応性が非常に高く、水にふれると瞬時に加水分解・縮合反応が起こり、シリカのゾル−ゲル系のようには、酸化チタンのゲルを得ることはできません。そこで、チタニウムアルコキシドを原料として酸化チタンのゲルを得るためには、強酸性条件を始め、様々な工夫が必要となります (Fig. 1) 。

従来の酸化チタンゲルの作製法
Fig. 1 従来の酸化チタンゲルの作製法

 しかし、触媒担体や分離媒体などの応用の幅を広げるためには、穏和な条件で容易に制御可能な酸化チタンゲル作製法の開発が必要です。本研究では、キレート剤と無機塩を利用した、新規酸化チタンゲル作製法の開発に成功しました。

無機塩として塩化アンモニウムを添加したときのゲルの外観
Fig. 2 無機塩として塩化アンモニウムを添加したときのゲルの外観

 エチルアセトアセテートによりキレート化されたチタニウムアルコキシドは、水に対する反応性が抑制され、水の添加後も、均一なゾルを作製できるようになります。しかし、これだけでは、粒子が凝集しただけの、もろく濁ったゲルにしかなりません (Fig. 2a) 。これは、一旦、加水分解が起こると、そこで局所的に反応性が増加し、溶媒との間で核生成・成長型の相分離が進行するためであると考えられます。しかし、この系に無機塩(塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩)を触媒量添加するだけで、透明にゲル化させることができることが分かりました (Fig. 2c, 2d)。  さらに、この新規ゾル−ゲル法を相分離と組み合わせることで、穏和な条件下で再現性よく酸化チタン多孔体を作製することに成功しました (Fig. 3)。

作製した酸化チタン(アナターゼ)多孔体
Fig. 3 作製した酸化チタン(アナターゼ)多孔体
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Fig. 4 異なる温度で焼成した酸化チタン多孔体の分離性能

 また、得られた多孔体モノリスはHPLC用カラムとして、ベンゼン誘導体やリン酸化合物の分離に有用であることが確認できました (Fig. 4)。

by George Hasegawa

論文

  1. George Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi and Teiichi Hanada, J. Sol-Gel Sci. Technol., 53, 59-66 (2010).     DOI:10.1007/s10971-009-2056-5
  2. George Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi and Teiichi Hanada, J. Am. Ceram. Soc., 93, 3110-3115 (2010).     DOI:10.1111/j.1551-2916.2010.03831.x
  3. George Hasegawa, Kei Morisato, Kazuyoshi Kanamori and Kazuki Nakanishi, J. Sep. Sci., 34, 3004-3010 (2011).     DOI:10.1002/jssc.201100538

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Last-modified: 2012-03-23 (金) 15:34:20 (3842d)