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メゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体

ポルフィリン類化合物は光合成反応系において、光エネルギーの捕集・伝達といった非常に重要な機能を担っている。こういった生体系で働くポルフィリン類は集合体として存在しており、複数個の色素が相互作用することにより、単独では達成できない高い機能性を発揮している。このような観点から人工光合成系や高機能の光エネルギーデバイスを目指し、さまざまなポルフィリンの多量体が生体系のモデル化合物として合成されてきた。しかしながらこれまでの多量体はポルフィリンどうしがベンゼン環などスペーサーで結ばれたものがほとんどであり、光捕集アンテナにみられるような強力な相互作用をもつ系は達成されていない。

これに対して当研究室では独自に開発した銀塩酸化法によってメゾ位で直接ポルフィリン同士が結合したメゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体の合成に成功した。メゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体は最短の距離でポルフィリン同士がつながっているために強い相互作用を持ち、また、隣り合うポルフィリン面同士はほぼ直交するという独特の形状を持っていることから、従来の多量体とは一線を画している。私達はこのメゾ-メゾ結合ポルフィリンを基盤とした多様な構造をもつポルフィリン多量体を合成し、その物性評価を行っている。

A. Osuka and H. Shimidzu, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36,135-137.



さらなる多量化



メゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体のもうひとつの特徴として、末端メゾ位が無置換で残るため繰り返し多量化させることができるということがある。この点に基づいて、繰り返しに次ぐ繰り返しで反応を行うことによって1024 (210 !!!) 量体、分子長0.8マイクロメートルという、世界最長、常識はずれの単分散分子の合成を達成した。電子顕微鏡を使った一分子の観察は現在盛ん行われているが、この1024量体は光学顕微鏡(いわゆる普通の顕微鏡)でも一分子が観察可能と考えられる領域に達している。

(注)ポリマーにはより長いものがあるがこれらはいろいろな大きさの分子の混合物である。これに対して単分散というのは、すべての分子の大きさが等しく一種類しかないということ。ナノマテリアルとして応用を考える際に重要なポイントになる。(ちなみに水分子の大きさはおよそ0.1ナノメートル=0.0001マイクロメートル)

また多量体の末端にエネルギーアクセプターを取り付けると、多量体部位で吸収された光エネルギーは高速にアクセプター部位へ移動することを明らかにした。このようにメゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体は、効率的な光エネルギー伝達性能を利用した光エネルギーワイヤーとしての応用が可能である。

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N. Aratani, A. Osuka, Y. H. Kim, D. H. Jeong, and D. Kim, Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2000, 39, 1458.

N. Aratani, H. S. Cho T. K. Ahn, S. Cho, D. Kim, H. Sumi, and A. Osuka, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 9668.

N. Aratani, A. Takagi, Y. Yanagawa, T. Matsumoto, T. Kawai, Z. S. Yoon, D. Kim, A. Osuka, Chem. Eur. J. 2005, 11, 3389.



ポルフィリンテープ



我々はメゾ-メゾ結合ポルフィリン多量体を強力に酸化することによってメゾ位だけでなくベータ位でも結合した縮環ポルフィリン多量体(通称ポルフィリンテープ)の合成に成功した。このポルフィリンテープにおいて、すべてのポルフィリンユニットは共平面化されており、分子全体で非常に広いπ電子平面を形成している。しかもその吸収は、なんと赤外領域にまで達するという驚くべきものであり、究極に小さなHOMO-LUMOギャップは単分子金属としての性質も示唆している。

A. Tsuda and A. Osuka, Science, 2001, 293, 79-82.



最長ポルフィリンテープ24量体

平面状ポルフィリン多量体(ポルフィリンテープ)の最大の弱点は溶解性の悪さである。このような平面分子は、溶液中で容易に会合し、不溶化を招く。そこで、巨大な置換基を用いて分子を保護する手法が考案され、これによって最大24量体までの合成が達成された。単分散の分子状テープとしては、極めて長い構造である。


T. Ikeda, N. Aratani, and A. Osuka, Chem. Asian J., 2009, 4, 1248-1256.



二次元拡張型ポルフィリンテープ

直線構造に限らず、L型、T型、正方形といった二次元型のポルフィリンテープも合成を実現した。これらの化合物は、非線形光学特性の知見として興味深いものであるばかりでなく、分子テトリスともいえる魅力的な構造体である。次に目指すは3次元!?

Y. Nakamura, S. Y. Jang, T. Tanaka, N. Aratani, J. M. Lim, K. S. Kim, D. Kim, and A. Osuka, Chem. Eur. J., 2008, 4, 8279-8289.

Y. Nakamura, N. Aratani, H. Shinokubo, A. Takagi, T. Kawai, T. Matsumoto, Z. S. Yoon, D. Y. Kim, T. K. Ahn, D. Kim, A. Muranaka, N. Kobayashi, and A. Osuka, J. Am. Chem. Soc.., 2006, 128, 4119-4127.



ポルフィリンーヘキサフィリンハイブリッドテープ

ポルフィリンの多量化にとどまらず、近年では環拡張ポルフィリン類の縮環にも成功している。金属錯体などヘキサフィリンで見出された様々な性質を応用することができるが、ハイブリッドに固有の物性も見つかっている。

T. Tanaka, N. Aratani, J. M. Lim, K. S. Kim, D. Kim, and A. Osuka, Chem. Sci., 2011, 2, 1414-1418.

H. Mori, T. Tanaka, S. Lee, J. M. Lim, D. Kim, and A. Osuka, J. Am. Chem. Soc., 2015, 137, 2097-2106.


最新review
“Conjugated porphyrin arrays: synthesis, properties and applications for funstional materials”
T. Tanaka, A. Osuka, Chem. Soc. Rev. 2015, 44, 943-969.