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アズレン縮環ポルフィリン


ポルフィリンに他の芳香族π電子系が縮環した化合物は、従来のポルフィリンとは全く異なる物性を示し、機能性材料への応用が強く期待されている。この際、ポルフィリンは正方形型の分子構造を有することから最大で4つの辺における修飾が可能である。しかしながら、一般的には合成の都合上、1つもしくは2つの辺で芳香族π電子系が縮環した化合物がほとんどである。当研究室では4つの辺全てにアズレンが縮環したポルフィリンをデザインし、その合成に成功した。得られた縮環ポルフィリンは、徹底的なπ拡張により過去の縮環ポルフィリンを凌駕する狭いHOMO-LUMOギャップを有し、1136 nmという近赤外領域に強い吸収を示した。また、全てのアズレン骨格は同心円状に縮環しており、高い対称性を有する美しい分子構造も魅力的である。

K. Kurotobi, K. S. Kim, S. B. Noh, D. Kim, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 3944-3947.



7,8-デヒドロパープリン


ポルフィリンのメゾ位とβ位を架橋するようにオレフィンが縮環した化合物は7,8-デヒドロパープリンと呼ばれる。我々はメゾブロモポルフィリンとアルキンの付加・環化反応により7,8-デヒドロパープリンを効率的に合成する手法を開発した。驚くことに得られた化合物は炭素原子2つのみによるπ拡張にも関わらず、1000 nm付近という長波長領域にまで吸収を示した。これは従来の18π芳香族電子系のみならず、メゾ位とβ位を架橋したビニレン上を通る20π反芳香族共役系の寄与が生じたためだと考えられる。このように1つの化合物に2つの共役系の寄与が存在する化合物は珍しく、さらなる物性解明に興味が持たれる。



A. K. Sahoo, S. Mori, H. Shinokubo, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 7972-7975.



加えて、7,8-デヒドロパープリンが架橋ビニレン上で直接連結した二量体においては、2つの7,8-デヒドロパープリンどうしが有効に共役することで800-1150 nmにかけて従来の反芳香族分子には見られないような禁制の解けた吸収を与えることが分かった。

N. Fukui, H. Yorimitsu, J. M. Lim, D. Kim, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2014, 53, 4395-4398.



コラニュレン縮環ポルフィリン


現在までに報告されている縮環ポルフィリンにおいて、縮環相手としてはアントラセンやペリレンといった平面π電子系がほとんどを占めている。私たちは新たな試みとして曲がったπ電子系を有するコラニュレンを選択し、縮環様式の異なる2つの異性体を合成した。興味深いことにこれら2つの化合物は全く異なった物性を示し、5員環を形成するように縮環した化合物において大幅なHOMO-LUMOギャップの低下がみられた。これは7,8-デヒドロパープリンにおいて見られた20π反芳香族共役系の寄与によるものだと考えられる。

K. Ota, T. Tanaka, A. Osuka, Org. Lett., 2014, 16, 2974-2977.



ヘテロ原子埋め込み型三重縮環ポルフィリン


ポルフィリンの周辺に窒素やホウ素といったヘテロ原子を導入することで、ポルフィリンの電子状態を劇的に変化させることが可能である。代表的な例として、メゾ位にジアリールアミノ基を有するポルフィリンは色素増感太陽電池におけるドナー-π-アクセプター型の増感剤としての応用が期待されている。しかしながらメゾジアリールアミノポルフィリンにおいては、ジアリールアミノ基とポルフィリンが立体障害により交差することで、窒素原子からポルフィリンへの十分な摂動が得られない。

我々は窒素原子上の2つのフェニル基と、ポルフィリンの2つのβ位を縮環させることで、π電子系に窒素原子が埋め込まれたポルフィリンを合成した。得られた化合物は従来のジアリールアミノポルフィリンと比べて高い電子供与性を示したことから、ホール輸送材料などへの応用が期待される。

N. Fukui, W.-Y. Cha, S. Lee, S. Tokuji, D. Kim, H. Yorimitsu, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2013, 52, 9728-9732.

N. Fukui, H. Yorimitsu, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 6311-6314.




加えて、窒素原子の代わりにホウ素原子を埋め込んだポルフィリンの合成も達成している。窒素原子のときとは対照的に、得られた化合物は高い電子受容性を示し、電子輸送材料としての応用が期待される。また、ホウ素上にピリジンを配位させることでホウ素の空軌道による摂動を妨げられることから、分子の電子物性をスイッチングすることも可能である。

K. Fujimoto, J. Oh, H. Yorimitsu, D. Kim, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 3196-3199.


最新review
“Fused porphyrinoids as promising near-infrared absorbing dyes”
H. Mori, T. Tanaka, A. Osuka, J. Mater. Chem. C 2013, 1, 2500-2519.
“Embedding Heteroatoms: An Effective Approach to Create Porphyrin-based Functional Materials”
N. Fukui, K. Fujimoto, H. Yorimitsu, and A. Osuka, Dalton Trans. 2017, 46, 13322-13341.