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ベータ位選択的ホウ素化

ポルフィリン類に対して、これまでにさまざまな反応や構造修飾方法が開発されてきた。遷移金属はポルフィリンの中心金属としては古くから多くの研究がなされているが、これを反応剤として用いる研究は未開拓な領域である。我々は現代有機化学の一翼を担う有機金属化学の手法を取り入れ、新たなポルフィリン類の新反応・構造修飾法を開発している。

ポルフィリン環は大きく分けて2種類の反応点(メゾ位・ベータ位)をもつが、高選択的反応性はメゾ位についてのみ知られており、ベータ位の修飾は難しいとされていた。これに対して当研究室では遷移金属触媒を用いる方法によってはじめてのベータ位高選択的反応の実現に成功した。ベータ位にのみホウ素官能基を導入できるこの反応は、続くカップリング反応によってさまざまな修飾基へと変換が可能であることから、これまで合成が困難であった ベータ修飾ポルフィリンという新たなカテゴリーをつくりだした。

H. Hata, H. Shinokubo, A. Osuka, J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 8264-8265.


例えば、ベータ位ホウ素化ポルフィリンを用いて、チオフェンやピリジンによって架橋した様々な環状ポルフィリン多量体の合成を行うことが可能である。中でも、ポルフィリンナノバレルはポルフィリン4つがベータ位でピリジン架橋することで筒状の構造をしており、フラーレンのようなゲスト分子を包接することができる。

J. Song, N. Aratani, H. Shinokubo, and A. Osuka, J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 16356-16357.



ポルフィリンピンサー錯体

ベータ位に更なる金属配位が可能なピリジンもしくはホスフィンを導入し、外周部に遷移金属を導入したポルフィリンピンサー錯体を作ることができた。これらの錯体はヘック反応やα,β-不飽和ケトンの1,4-還元の触媒として用いることができる。さらに興味深いことに、これらの錯体においては周辺の金属原子の電子状態がポルフィリンの中心金属によって変化するため、中心金属に依存して触媒活性が変化することがわかった。

S. Yamaguchi, T. Katoh, H. Shinokubo, and A. Osuka, J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 6392-6393.

K. Fujimoto, T. Yoneda, H. Yorimitsu, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2014, 53, 1127-1130.


ベータ位選択的直接アリール化


ホウ素化を経由せず、ポルフィリンのベータ位のみを直接的にアリール化することも可能である。本反応は今までに合成が困難だったベータ位修飾ポルフィリン類を 1ステップで合成できる有用な手法である。

K. Kawamata, T. Tokuji, H. Yorimitsu, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2011, 50, 8867-8870.

Y. Yamamoto, S. Tokuji, T. Tanaka, H. Yorimitsu, A. Osuka, Asian J. Org. Chem., 2013, 2, 320-324.


ベータ位選択的ハロゲン化


炭素-ハロゲン結合はクロスカップリング反応などの変換反応により様々な置換基へと転換することができるため、ハロゲン化ポルフィリンは機能性ポルフィリノイドを合成する上で重要な合成中間体である。しかしながらポルフィリンのハロゲン化は反応性の高いメゾ位で選択的に進行するため、無置換のメゾ位を残しながらベータ位にハロゲン置換基を導入することは不可能であった。我々は先に述べたベータボリルポルフィリンのボリル基をハロゲンに変換することで、ベータ位選択的なハロゲン化を実現した。

K. Fujimoto, H. Yorimitsu, A. Osuka, Org. Lett., 2014, 16, 972-975.



また、得られたベータハロポルフィリンに対して、Palau'Chlorを用いた塩素化反応を施すことで、ハロゲン化されたベータ位の隣のメゾ位に塩素原子を導入することも可能である。

N. Fukui, H. Yorimitsu, A. Osuka, Angew. Chem. Int. Ed., 2015, 54, 6311-6314.


これらのハロゲン化ポルフィリンは、機能性ポルフィリノイド合成に一石を投じる革新的な中間体となることが期待される。



求核的ポルフィリン試薬


グリニャール試薬や有機リチウム種は有機合成化学における重要な求核剤である。しかしながら、これらのポルフィリン版といえるポルフィリニルグリニャール種やポルフィリニルリチウム種は、ポルフィリンの高い反応性のために容易に自己反応が進行するため合成が困難であった。当研究室では低温条件下でハロゲン-金属交換反応を施すことで、これらの求核的ポルフィリン試薬を調整することに成功した。加えて、これらの高い求核性を利用することで周辺にシリル基やジアリールボリル基を有するポルフィリンの初の合成を達成した。今後はこれらを用いた新規機能性ポルフィリンの合成に興味が持たれる。

K. Fujimoto, H. Yorimitsu, A. Osuka, Eur. J. Org. Chem., 2014, 4327-4334.

K. Fujimoto, H. Yorimitsu, A. Osuka, Chem. Eur. J., 2015, 21, 11311-11314.

K. Kato, K. Fujimoto, H. Yorimitsu, A. Osuka, Chem. Eur. J., 2015, 21, 13522-12525.


最新reviews
“Marriage of porphyrin chemistry with metal-catalysed reactions”
H. Shinokubo, A. Osuka, Chem. Commun. 2009, 1011-1021.

“Organometallic Approaches for Direct Modification of Peripheral C-H Bonds in Porphyrin Cores”
H. Yorimitsu, A. Osuka, Asian J. Org. Chem. 2013, 2, 356-373.