.超臨界アルコール中での貴金属超微粒子の合成

 超微粒子の合成手法として、ポリマーを保護剤とした化学還元法による手法は、大量合成向きであり、有望な方法として着目を集めている。このような化学還元法では、従来常圧下の還流条件で行われることが多く、反応時間が時オーダーかかり、そうした意味で効率は悪い。われわれは、高温高圧の条件下で反応を進めることにより、温度圧力を制御することで、粒径サイズのコントロールならびに反応の効率化を測ることを企画し、超臨界アルコールあるいはアルコール水混合溶媒を用いた系での還元反応の検討をおこなった。

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 合成は以下に示すような流通型の反応容器を用いておこなった。

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以下に典型的な例を示す。PVP (ポリビニルピロリドン)を保護剤として白金イオンやロジウムイオンを原料として用いた場合、分散特性のよい2.5ナノメーター程度の微粒子を生成することが可能であった。一方で、パラジウムイオンや金イオンを出発原料とする場合は常圧下での合成と比較してそれほど分散特性のよい微粒子を得ることは困難であった。

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ここで、原料に二種類の金属イオンを混ぜて還元反応を行うとどのような微粒子が生成するかは非常に興味深い。われわれは、いくつかの金属のペアに対して高温高圧合成実験を試み、生成した微粒子の構造解析をX線吸収分光法に基づいておこなった。その結果、Pt/Rh, Pt/Pd, Pt/Ruのペアについては合金化が起こることがわかった。またPt/RhおよびPt/Pdについてはもっともらしい合金構造はランダム分布に近いことが明らかとなった。常圧下での合成ではこれらの合金はPtコアでRhあるいはPdシェルのコア・シェル構造をとることから、高温での反応速度の増大が合金化プロセスに影響を与えていることが明らかである。一方でPt/Ruの場合には常圧下での合成では合金化がおこらず、分離した微粒子が生成するのであるが、高温高圧条件下ではPtコアでRuシェルのコア・シェル構造をとることが明らかとなった。またRh/Auの場合は合金化が起こらないことも分かった。

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 ここでは保護剤としてもっぱらPVPをもちいた結果を紹介したが、保護剤の選択によって生成する微粒子がどのように変化するのかもまた興味の持たれるところである。PVP以外にPVA (ポリビニルアルコール)や有機溶剤に溶けるP2VP (ポリ-2-ビニルピリジン)、また強く化学結合するものとしてヘキサンチオールなどを用いて合成を試みている。PVAは熱安定性が低いために高温合成では有効に働かなかったが、P2VPをもちいた合成では常圧では起きなかった還元反応を高温高圧で引き起こすことに成功している。またヘキサンチオールでは微細な白金超微粒子(1.5nm程度)を合成することが可能であった。

 

 

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