イミダゾリウム系のイオン液体は、よくいわれているように比較的極性の低いアルキル鎖部分と、極性の高いイミダゾリウムリングの部分が液体中で不均一に分布していることが期待される。従って、長鎖のアルキル基をもつカチオンは界面活性剤のようにふるまうことが期待される。このような観点から、イオン液体は金属微粒子に対して保護剤としての役割をはたすのではないかと我々は考え、イオン液体中においた金箔に対してレーザーアブレーションを行うことにより金ナノ粒子の生成を試みている。
実験装置の概略を以下に示す。ナノ秒Nd:YAGレーザーを励起光源として1064nmおよび532nmのいずれの場合でも実験を行った。イオン液体には鎖長のことなる3種類をもちいた。
ずべてのケースで金微粒子によるプラズモン吸収が観測された。ただし、アルキル鎖長の短いイオン液体では生成した超微粒子は不安定であり、数日後にはすべてが沈殿してしまった。鎖長が伸びるにつれて微粒子は安定となり、イオン液体が界面活性剤的な役割を果たしていることが明らかとなった。
また励起波長による生成した粒子サイズの違いは興味深い点である。これは通常のSDSなどの界面活性剤をもちいたアブレーション実験で観測されていることと同様の現象であり、532nmでは生成した微粒子がレーザー光を吸収してさらに分解することによるものであると考えられる。実際に1064nmで生成した微粒子に532nmのレーザー光を照射する実験をおこなうと微粒子が小さくなることが確認された。
今後、より多くの種類のイオン液体を試すことで、界面活性剤としてのイオン液体の機能についてさらなる検討を加えることが可能となろう。
(電顕写真は、磯田研(京大化研)小川博士による。)