. 超臨界水中での電荷移動ダイナミクス

                  

超臨界水中での反応素過程に対する理解を深めるために、我々はpNAの逆電子移動反応過程の検討を進めている。光励起されたpNA分子は電荷分離状態にあり、逆電子移動過程を経て基底状態に戻る。この反応は様々な過程を含み、これらが過渡吸収スペクトルの変化として現れる。我々は超高速過渡吸収測定を超臨界水に適用するシステムの構築をすすめ、pNAの光励起緩和過程の観測を行った。

 

 

下図に400nmのサブピコ秒のパルスで光励起したのちの過渡吸収信号の一例を示す。400nm付近では光励起による基底状態のブリーチ信号の回復が観測され、長波長側では励起状態から基底状態への緩和にともなう振動励起された基底状態(ホットバンド)が観測される。各々の波長領域での時間変化を調べることで、励起状態から基底状態への逆電子移動反応速度、ならびに基底状態での振動緩和速度を決定することができる。

 

 常温から超臨界温度まで圧力一定条件下で測定した結果を示す。未だ誤差が大きいが、逆電子移動反応速度は測定した領域ではほとんど変化せず、吸収スペクトルのピーク、すなわち自由エネルギー差が大きく変化するのと対比的である。これは温度上昇による加速と自由エネルギーの増加による減速の競合の結果によるものと考えられる。一方で振動緩和速度は密度減少とともにいったん増加し、また減少する。これも温度上昇による加速と、密度減少による減速の競合の結果によるものであると考えられる。

 

現在、より低密度領域での測定をおこない、Marcus理論が予測する密度変化の振る舞いとの比較を進めている。

 

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