. 超臨界水中でのプロトン移動

   プロトン移動過程は様々な化学反応に関与する最も基本的な過程の一つであり、これまで実験的、理論的に多様な観点から研究が行われている。このようなプロトン移動過程が、超臨界水や超臨界アルコールといった水素結合性を持つ超臨界流体中でどのように進行するかは非常に興味深い問題であるが、これまでにほとんど研究されていない。我々は光励起状態で強い酸性を示すシアノナフトール系の化合物を対象として、時間分解蛍光測定によって超臨界水中でのプロトン移動過程の研究を進めている。5-シアノ-2-ナフトール(5CN2)の光起後の反応スキームを図に示す。5CN2は基底状態では、ROH型で存在するが、光励起状態では酸性度が高くなり、水中ではもっぱらRO型に解離する。ところがシクロヘキサンなどでの無極性溶媒では解離せずにROH型のまま励起状態から緩和する。これが超臨界条件下でどのように変化するのかは非常に興味深いところである。

図に典型的な時間分解スペクトルを示す。常温常圧では励起直後は、360nm付近のROH型からの蛍光が観測されるが、高速にRO-型へと溶媒へプロトン移動を行い、530nmの蛍光が立ち上がる。一方超臨界条件では(400,23MPa)では励起状態はもっぱらROH型に支配される。その中間領域では図に示されるように420nm付近に第3の成分が観測される。この成分の帰属とともにプロトン移動の速度について現在詳細に検討を進めているところである。

 

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