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生物が刺激を受けてから実際に機能するまでの過程、例えば植物が光という刺激を受容してから実際に開花という機能に至るまでの過程(図1)、これを分子レベルで理解することは現代の分子科学や生物物理学における重要な目標の一つです。このためには、まず刺激を受容するセンサーとなる蛋白質が活性化に至るまでの反応過程を理解することが第一歩となります。我々の研究チームではこうした蛋白質反応のダイナミクスを時間分解で(時々刻々と)捉え、明らかにすることを目指して研究しています。


近年の構造研究の発展によって、多くの蛋白質の立体構造が明らかにされてきました。しかし、蛋白質分子がこうして決められた構造を保ったまま実際に機能することはほとんどありません。刺激を受容した部位の僅かな変化が活性部位の変化に繋がり、実際の機能に至っています。そのため、構造が時間とともに移り変わる様子(構造変化ダイナミクス)を明らかにすることが機能の理解には不可欠です。こうした蛋白質反応研究は、構造研究と機能研究の間を取り持つという意味においても重要な位置づけにあります。

従来蛋白質反応ダイナミクスの研究は、刺激受容後の吸収(色)の時間変化を観測する手法で行われてきました。ところが、巨大な蛋白質分子内で吸収を示すのは発色団と呼ばれる小さな分子だけです(図2)。そのため、吸収の変化を観測するだけではこの分子から離れた部分での反応を理解することは感度上困難です。興味ある重要な反応は刺激受容後の活性部位の変化です。この活性部位は発色団から離れた部位であることが多く、その変化を高い時間分解能で捉えていくことは従来不可能なことでした。

我々の研究室では上記の困難を克服するために過渡回折格子(TG)法を応用した新しい研究手法を開発し、様々な興味深い情報を得ることに成功してきました。

当研究室におけるユニークな方法論や得られた結果の新規性は注目されてきており、海外も含めた多くの研究者との共同研究が行われています。そのため、研究対象としている蛋白質が以下に示すように非常に多岐に渡っていることも我々の研究室の特徴的な点です。(TGチーム研究内容一覧へ)また近年では大腸菌を用いた蛋白質大量発現のシステムも導入し、試料作製から測定までを自身で行えるようにもなってきています。

最近の興味はさらに広がり、蛋白質反応に重要とされる「構造揺らぎ」を時間分解で検出するための新しい測定法の開発や緩衝液中で明らかにした構造や反応のダイナミクスが生理的条件下ではどうなるのか、すなわち「Crowding環境下」における測定への発展を目指した研究も行っています。


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