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☆青色光センサータンパク質TePixDの光反応に対するCrowding効果☆

序論

生体内では様々な高分子種が高濃度で混在しており、このような混み合った環境をCrowding環境と呼ぶ。Crowding環境は分子の拡散速度や反応速度などに大きく影響をおよぼすと考えられるが、多くの生体分子の反応研究ではUncrowdedな環境であるバッファー中などで実験されることが多い。本研究ではFicoll (M.W.70000)を高濃度で溶かすことによって擬似的なCrowding環境下を再現し、その環境下で背青色光センサータンパク質TePixDの光反応ダイナミクスを過渡回折格子法 (TG法)で調べた。

結果と考察

TePixDはシアノバクテリアに含まれる青色光センサータンパク質である。このタンパク質は図1の結晶構造が示すように5つのモノマーがリング状の構造を形成しており、この五量体と十量体との平衡が暗状態で存在していることが報告されている。青色光を照射すると、十量体だけが拡散係数変化を伴う反応を示し、それが機能発現に重要な役割を果たすと考えられている。図2はFicollの濃度を変えた時のTePixDのTG信号である。Ficollの濃度が増加すると、TG信号が遅い時間スケールにシフトしその信号強度が増加した。信号のシフトはFicollを入れたことにより粘度が増加したためと考えられ、信号強度の増加についてはCrowding環境下では五量体-十量体の平衡が十量体に傾くためと解釈した。この結果はTePixDが生体内で十量体として支配的に存在することを示している。




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