化学修飾シトクロムcの折り畳み

天然状態にあるタンパク質はそれ自身のアミノ酸配列によって決められる、ただ一つの構造を持つ。数ある構造の中から一つだけの構造を選択的にとる理由については解明されていないが、実際に構造を作っている過程、つまり折り畳みのダイナミクスを研究すれば、効率的な構造選択則を理解することができると考えられる。
これまでの研究から、多くのタンパク質において構造の主要な部分がミリ秒以下の時間で既に形成されていることが分かってきている。変性状態の広がった構造から天然状態のまとまった構造への収縮もこの時間内で起こっていると考えられているが、この収縮がどのようなタイムスケールでどのようにおこっているかを知ることが、折り畳みの初期の機構を理解する上で極めて重要になっている。また、その中間体において会合体の関与することもあり、その性質について興味が持たれる。
我々はシトクロムcの65番目の残基メチオニンをオルトニトロベンジル基で修飾したサンプルを用いて1、2、ある変性条件下でこの修飾基を308nmのレーザーの光照射で解離し、構造の安定度の違いを利用して折り畳みを開始させることにより折り畳みのダイナミクスを検出することを試みた。検出法としてはタンパク質全体の変化を捉えるため、過渡回折格子(TG)法を用いた。この過程において、過渡的に生成する会合体を検出し、その性質を明らかにすることができた。

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