ガラス状態のような液体では、外界から圧力を受けたときに新たな安定構造をとるためのゆっくりとした構造緩和が生じる。構造緩和を示す流体においては、その音速度が音波の周波数に依存して変化し、緩和のメカニズムによって周波数依存性が異なる。我々は、MHzから数十GHzのひろい周波数領域に渡って音速を測定可能なTG法を利用し、いくつかの典型的なイオン液体の音速分散の検討をおこなった。
TG法にて音速を測定する原理については、超臨界流体のページに詳述してある、音速分散を測定するためには励起光の交差角度をさまざまに変化させて音響信号を測定する必要がある。下図が実際に角度を変えて測定した一例である。
このようにして測定した音速度と音波の周波数の関係を示したのが下図である。図から明らかなように音速はサブナノ秒領域での緩和過程をしめす。またこの緩和関数は単純なデバイ型の緩和機構で説明することができず、Cole-Davidson型の緩和関数が必要であることがわかった。さらに誘電緩和のタイムスケールと比較すると、[BMIm][PF6]ではほぼ同じタイムケールとなるが、[BMIm][NTf2]では構造緩和のほうが速いタイムスケールで生じていることが明らかとなり、アニオンの種類によってそのダイナミクスが異なることがあきらかとなった。