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水分子:単量体と二量体

この論文では極低温(6 K)Cu(110)表面に単離した水分子のモノマーおよびダイマーのダイナミクスについて報告しています。研究は走査型トンネル顕微鏡(STM)と密度汎関数理論(DFT)計算を用いて行っています。

実験で水モノマーは
Cu原子の真上(on-top)に吸着しており、6 Kにおいても熱的に表面を拡散していることがわかりました。理論計算では安定な吸着構造を決定しています。水はダイマーを形成するとSTM像にとてもユニークな特徴が現れます{詳細はPhys. Rev. Lett. 100, 166101 (4pp) (2008).を参照してください}。ダイマーは水素結合の交換を伴いながら表面を拡散していきます。

これらの水モノマーの拡散やダイマーにおける水素結合の動的過程は金属表面における「濡れ」現象を原子レベルで理解するための第一歩であると考えています。

(a) 水モノマーはSTMでは丸い輝点として観測されます。右上の途切れた像はモノマーが[1-10]方向に1格子分移動したことを示しています。挿入図はモノマーの吸着サイトを決定するためにCO分子と共吸着させて測定を行ったSTM像で白い線はCu(110)の格子点を示しています。
(b)(c) DFT計算によって求めた安定構造です{side view (a), top view (b)}


















モノマーは6 Kでも熱的に表面を移動しており、これをアトムトラッキングによって調べました。
  • Vs = 24 mVIt = 0.5 nAで測定したトラッキングデータです(赤線は[1-10]、青線は[001]方向のデータ)
  • 移動が起こる時間間隔のヒストグラムです。指数関数でフィッティングすることで移動頻度を求めました。挿入図は移動頻度をトンネル電流に対してプロットしたものです(Vs = 24 mVで固定)




2つのH2Oダイマーが相互作用する様子を捉えたSTMの連続像です。ダイマーは水素結合の交換を伴いながら表面を拡散していきます。
  • ダイマーは水素結合の交換によって2状態を行き来する像が得られます。
  • ダイマーは互いに接近すると相互作用し、水素結合の交換が制限されます。
  • 互いに通過していきます。
  • ある距離だけ離れると再び通常の交換が観測されるようになります。