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巨大Rashba効果の最前線

昨年4月のエントリー「スピン偏極電流への一里塚---巨大Rashba効果」から1年半。研究は着々と進んでいます。その概要を紹介します。(その前に: 最近、巨大Rashba効果についての解説記事を書きました。[表面系のRashba効果])

昨年の段階では、巨大Rashba効果は金属表面でしか観測されていませんでした。しかし、基板が金属では、表面でいくらスピン偏極電流ができても、圧倒的に大きな伝導経路である基板を非偏極電流が流れてしまうので、偏極は事実上消滅してしまいます。よって、絶縁体表面で巨大Rashba効果を実現することが重要な意味を持ちます。波及効果を考えると、半導体表面であることが重要です。半導体表面で巨大Rashba効果によるスピン分裂が生じるのかどうかは、実際の物質で確かめなくてはなりません。我々をはじめいくつかの研究グループでは、SiあるいはGeの表面にBiなどの重元素の単原子層をつけることにより、2次元表面電子状態における巨大Rashba分裂を作り出すことに成功し、今年、あいついで論文発表しました。これで第1のステップがクリアされたことになります。

ところが、今年夏までの時点で観測された「半導体表面上の巨大Rashba効果」は、いずれも伝導にほとんど寄与しない非金属的バンドにおけるものでした。そこで我々のグループではさらに探索をすすめ、いくつかの表面において
伝導に寄与する金属的バンドにおいて巨大Rashbaスピン分裂を見つけることに成功しました。(その「成果」のひとつ。)これらは現在論文投稿中あるいは準備中で、近いうちにここで紹介することになると思います。