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DNA Nanotechnology in Kyoto

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博士論文概要

Artificial Molecules for Site-Selective Scission of RNA and DNA

(RNA及びDNAの位置選択的切断分子の開発)

博工第3919号(東京大学)


 塩基配列特異的に核酸分子を認識し切断する天然の制限酵素は,遺伝子組み換えや巨大なゲノムの解析を行う上で非常に重要である。しかし,認識し切断できる塩基配列が限定され,望みの位置で自由に切断することは困難である。このため,認識部位と切断部位を合わせ持つ人工的な制限酵素が必要となる。一方,RNAを塩基配列特異的かつ位置選択的に認識し切断する分子は,RNAの構造や機能を知る上で重要であり,m-RNAの運ぶ情報の制御を可能とする。また、核酸の認識分子となるアンチセンスDNAによっても、m-RNAの情報伝達を制御できる。つまり、AIDS発症の抑制等への応用が可能である。以上の人工制限酵素及びRNAの塩基配列特異的な認識及び切断分子の分子設計,合成及びその機能の検討を行った。  
 人工制限酵素を構築する上で,塩基配列認識部位と切断部位の2つが必要であるが,切断部位をより効果的にターゲット鎖へ近づけるための認識部位の分子設計がその人工制限酵素の性能を決める大きな要素となる。その目的のため切断分子を鎖内に導入した新規なDNAオリゴマーを分子設計,合成,それを用いたときのターゲットDNAとの相互作用及び機能の評価を検討してきた。
(1) A Novel Phoephoramidite for the Site-Selective Inh-oduetioo of Functional Groups into Oligonueleotides via Versatile Tethers.
鎖内のリン原子に側鎖を導入したDNAオリゴマーを検討した[1]。生成する2つのジアステレオマーのうち、2本鎖形成について異性体の一方が2本鎖を安定に形成できることを見いだした。また、インターカレーターをリン原子に導入すると2つの異性体で異なるインターカレートの様式を示すことが明らかになった。このことにより,塩基対間に挿入される位置が決まるので、インターカレーターを化学的に修飾し切断分子の導入を行えば,切断分子をよりターゲットDNAの望みの位置に近づけることが可能となり,切断の位置特異性が向上すると考えられる。

[1] M. Endo, M. Komiyama, J. Org. Chem. 1996, 61, 1994-2000.

(2) Novel Phosphoramidite Monomer for the Site-Selective Incorporation of a Diastereochemically Pure Phosphoramidate to Oligonucleotide.
よりシンプルなDNA鎖内への機能性分子の導入法を検討し、容易に修飾を行える新規ホスホロアミダイトと合成法を確立した[2]。特徴としては、DNAオリゴマー内に非天然型の主鎖及び側鎖を持ち、固相合成により側鎖及び機能性分子を導入できる点である。検討の結果、この修飾オリゴマーは2本鎖形成時に天然型のDNA同様の構造をとり、生理条件下で十分安定な2本鎖形成能をもつことが明らかとなった。

[2] M. Endo, Y. Saga, M. Komiyama, Tetrahedron Lett. 1994, 35, 5879-5882.

(3) Molecular Design for a Pinpoint RNA Scission. Interposition of Oligoamines between Two DNA Oligomers.
先に挙げた、機能性DNAオリゴマーにRNA切断活性部位であるオリゴアミンを導入し、RNAの塩基配列特異的加水分解を検討した[3] 。反応は、37℃、pH8前後の生理条件下で行った。その結果、トリエチレンテトラミンを鎖内に導入したDNAを用いると、切断活性部位の正面付近で加水分解が行われた。また、RNAの加水分解機構を考慮して、分子モデリング計算を行うと、この切断されるリン原子にオリゴアミンが近づいたDNA/RNA2本鎖構造が、エネルギー的に最も安定なものであることが明らかとなった。

[3] M. Endo, Y. Azuma, Y. Saga, A. Kuzuya, G. Kawai, M. Komiyama, J. Org. Chem. 1997, 62, 846-852.

(4) RNA Hydrolysis by the Cooperation of Carboxylate Ion and Ammonium Ion.

小分子によるRNAの位置特異的切断は、人工リボヌクレアーゼの構築やRNAの立体構造の情報を得るために重要である。本研究では、アントラキノンにリンカーを介してグリシン3及びイミノ二酢酸4を導入した分子により生理条件下でtRNAの効率的な切断を行った[4] 。tRNAは位置選択的に切断され、反応は加水分解によって行われた。グリシンの誘導体3では5’-Py-A-3’選択的、イミノ二酢酸の誘導体4では、5’-G-N-3’選択的な加水分解が見られた。つまり、ribonuclease A及びribonuclease T1と同様の選択性を示した。RNA加水分解の反応機構は、末端のカルボキシラートとアンモニウムイオンが必要であることから、この2つの官能基の酸塩基協同触媒作用で行われることが明らかになった。

[4] M. Endo, K. Hirata, T. Ihara, S. Sueda, M. Takagi, M. Komiyama, J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 5478-5479.

 


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