本研究室ではこれまでにTG法を用いてフォトトロピンのLOVドメインの光反応ダイナミクスの解明に取り組んできました(詳細は中曽根ページ参照)。

  本研究では、シーケンスの相同性の高さや生理活性測定の先行研究などから近年新たに注目を集めている、LOV2ドメインのN末端側に位置するヘリックス構造(A'α ヘリックス;図1.1)の光反応における構造変化ダイナミクスの解明に取り組みました。具体的には遺伝子操作により様々な変異体を作製し、それらのTG信号を測定・比較することでA'αヘリックスの構造変化ダイナミクスの検出に成功しました(図1.2)。

図1.1. (a) フォトトロピンの一次構造、(b) LOV2ドメインとその周辺の構造

図1.2. (a) TG測定に用いたLOV2の変異体、(b)LOV2の変異体の分子拡散信号(i) WT (A'αとJαのunfolding), (ii) T469I (Jαのunfolding), (iii) I608E (A'αのunfolding)

 TG信号の解析の結果、N末端側のA'αとC末端側のlinker領域(Jα)の構造変化はそれぞれ独立に起きており、更にA'αの崩壊速度はlinker領域(Jα)の崩壊速度(1 ms)よりも遅い時定数(12ms)で起きていることが明らかになりました(図1.3)。
A'αがlinker領域とは独立に反応するという結果は、A'αが直接キナーゼの活性制御に関与している可能性を支持する結果となりました。


図1.3. A'α及びJαの光反応スキーム (J. Phys. Chem. B. 2013)