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マクロ多孔性炭素材料の作製

 多孔性カーボン材料は、吸着剤や濾過材、断熱材、燃料電池における電極など、産業的利用価値が非常に高い材料です。特に、液体の流路となる均一なマクロ孔を有する多孔性カーボン材料は、分離担体や液相反応デバイスとしても応用が期待されています。一般的な多孔性カーボン材料は、木材やピッチの炭素化、もしくは多孔性シリカゲルを鋳型として用いる方法により作製されますが、前者は細孔径や細孔容積の制御が難しく、後者は作製プロセスが長いといった問題点があります。本研究では、スピノーダル分解型の相分離を伴うリビングラジカル重合を行うことにより作製した、細孔径や細孔容積の制御が可能なマクロ多孔性架橋高分子ゲル(研究内容5)に、不活性雰囲気下で熱処理を行うことで直接炭素化を行い、マクロ多孔性カーボンを作製しました。

炭素化前後における試料の外観およびマクロ孔構造の変化
Fig. 1 炭素化前後における試料の外観およびマクロ孔構造の変化

 Fig. 1に、スルホン化処理を施したポリジビニルベンゼン多孔体、およびそれを炭素化させた試料の外観とマクロ孔の様子を示します。多少の収縮は見られるものの、炭素化後もマクロ孔構造が維持されていることが分かります。

作製した活性炭の窒素吸着等温線とFE-SEM写真
Fig. 2 作製した活性炭の窒素吸着等温線(左)とFE-SEM写真(右)

 さらに、作製した多孔性カーボンに炭酸ガス賦活処理を施すことにより、非常に大きな比表面積を有する活性炭を作製することに成功しました(Fig. 2)。このような制御された、そろったマクロ孔を有するバルク状の活性炭は、ほとんど例がありません。

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Fig. 3 活性炭モノリス電極の2M 硫酸水溶液中における(a,b)サイクリックボルタンメトリー(CV)および(c,d)充放電測定結果
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Table 1 活性炭モノリス電極の電気容量

Fig. 3およびTable 1に作製した活性炭モノリスを電気二重層キャパシタとして応用した例を示します。モノリス型電極はバインダーなどで粉末を固めた電極に比べて導電性が良いため、走査速度を大きくした場合においても高い電気容量を示すことが分かりました。

by George Hasegawa

論文

  1. Joji Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi and Teiichi Hanada, C. R. Chim., 13, 207-211 (2010).     DOI:10.1016/j.crci.2009.04.003
  2. George Hasegawa, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi and Teiichi Hanada, Carbon, 48, 1757-1766 (2010).     DOI:10.1016/j.carbon.2010.01.019
  3. George Hasegawa, Mami Aoki, Kazuyoshi Kanamori, Kazuki Nakanishi, Teiichi Hanada and Kiyoharu Tadanaga, J. Mater. Chem., 21, 2060-2063 (2011).     DOI:10.1039/C0JM03793A

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Last-modified: 2012-03-23 (金) 15:34:06 (4435d)