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Last updated on 10 Jun 2013.


2014年度集合写真
October 2014.

boshuu2013



京都大学理学研究科化学専攻・表面化学研究室へようこそ。

当研究室では、固体表面に生成する低次元的物質の構造・性質、固体表面が関わるさまざまな化学現象などについて、基礎科学(表面化学と表面物理)の立場から研究しています。

当研究室の研究の一つの柱は、表面の特異性を利用して、表面の電子系、格子系、電子スピンなどが織り成す新しい物性現象を調べる研究です。これは表面物性化学、表面物理などと言われる分野にあたります。とくに我々が目指しているのは、これまで誰も知らなかった新しい表面物質を作り出し、これを舞台に独創的な物性研究を展開することです。

もう一つの研究の柱は、表面を利用して単離した単一分子や単一分子クラスターに関しての振動分光、反応制御、量子ダイナミクス等の直接観測、さらには単一分子電気伝導の観測などの研究です。低温走査トンネル顕微鏡の技術を極限まで追求することにより、水素原子のトンネル現象や分子一個一個の伝導現象などに迫ろうとしています。


STM
固体の表面とは固相と真空(あるいは気相や液相)の界面にあたります。固体化学・固体物理の立場からすると、表面では結晶の並進対称性が破れており、一種の不純物、いわば邪魔者になります。別の見方をすると、表面における対称性の破れによって、通常の固体化学・物理の常識に反する「奇妙な現象」----- ということはつまり、「物質科学として非常に興味深い現象」ということですが ----- がもたらされます。たとえば、3次元的な固体としては完全に非磁性な、つまり電子スピンの偏りが全くないような物質であっても、表面においては、空間対称性の破れによってある種のスピン-軌道相互作用が生じ、伝導電子に対して特異なスピン分裂が出現することがあります(Rashba-Bychkov効果あるはRashba効果--ラシュバ効果)。このスピン分裂は大変に奇妙なもので、平衡状態にある表面の電子スピン全体としては全く偏りがないのに、波数空間で眺めるとスピンの方向によって電子のエネルギーが分裂します。我々は、このスピン分裂の大きさが表面によっては1 eVを上回ることを発見しました(巨大Rashba効果---巨大ラシュバ効果)。さらに、これを利用することにより電子のスピンを識別したり制御したりする方法を提案しています。これは、表面科学、表面物理の枠を超えて、スピントロニクスと呼ばれる新しい電子工学への展開の可能性からも大きな注目を集めています。このRashba-Bychkov効果に関連する研究は、我々の最近の重要な研究テーマの一つです(NEW巨大Rashba効果の最前線スピン偏極電流への一里塚--巨大Rashba効果)。

また、結晶表面における相転移現象についての研究も進めています。表面などの低次元系では、電子系と格子系の間の相互作用により、さまざまな特徴的な相転移現象が見られます。最近、低次元物質で良く研究されてきたパイエルス転移(電荷密度波相転移、CDW転移とも言う)に、従来知られていなかった強結合/長コヒーレンス型という新しいタイプがあることを見出し、相転移の振る舞いも従来知られてきたものとは全く異なることを見出しました。また、吸着金属原子が四量体と単量体の間で構造変化し、それにともなう欠陥配置エントロピーを駆動力として進行する秩序ー無秩序型相転移を見出しました。このような現象について、表面X線回折などによるによる精密構造解析/臨界散乱と、角度分解光電子分光/第一原理電子状態計算による電子構造解析の両面から研究を進めています。(パイエルス転移の新しい仲間

最近、ナノサイエンス、ナノテクノロジーと呼ばれる研究分野が発達しています。当研究室では、現時点では「究極のナノサイエンス」ともいえる単一分子科学の研究を展開しています。極低温走査トンネル顕微鏡の技術を応用することにより、表面上に単離した単一の小分子やそのクラスターを、一つ一つ選択し、その振動スペクトル、電子スペクトルを測定します。さらに非弾性トンネル過程により特定の振動モードを励起して分子運動や化学反応の進行を制御します。さらに、個々の分子を通した電子伝導現象を直接測定する研究を進めています。(低温の表面では、分子の拡散運動を抑制することができるので、1個、2個、3個、....と個数を選択したクラスターを作ることが可能です。さらに多数の分子による配列構造も実現できます。左の写真は水分子を幅1 nmのリボン状に配列させた「一次元氷結晶」。)
最近では、極低温の金属表面上に生成した水分子二量体において、水素原子のトンネリングを介した水素結合の組み替え反応を直接観測することに成功しました(水クラスターにおける水素結合の量子ダイナミクス)。さらに、表面上の孤立した水酸基や、水分子と水酸基のクラスターなどにおける構造変換のダイナミクスについて系統的に明らかにしつつあります(NEW表面水酸基のトンネル・ダイナミクス)。水素結合の組み替えは、生体内を含めわれわれの身の回りのさまざまな化学過程において重要な役割を果たしていますが、そのような広い観点からみても重要な成果が得られています。

近年、水素エネルギーの貯蔵や利用に関連した水素吸蔵、燃料電池などの研究が進んでいますが、これらの研究においても、固体の最表面における原子・分子の詳細な振る舞いを理解する必要が再認識されています。当研究室では、超高感度な振動分光法である電子エネルギー損失分光等を用いることにより、表面における化学反応素過程の研究を進めています。